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構造と原理

なぜルールは必ず腐るのか:150人の壁とグッドハートの法則

作ったときは、たしかに必要なルールだった。 それが数年後には、誰も目的を説明できない儀式になっている。 どこかで判断を誤った人がいるはずだと思って経緯をたどっても、そういう人は出てこない。 この気味の悪さは、運用の怠慢では説明がつかない。 制度は、導入した瞬間から本来の目的を離れていく力を内側に持っている。 Read more

日本の有罪率99.9%が映す構造:疑わしきは罰せず、の建前と実態

有罪率99.9%。 この数字は、日本の刑事司法の精度の高さとして紹介されることもあれば、推定無罪が死んでいる証拠として引かれることもある。 正反対の結論が同じ一つの数字から出てくるのは、読む側の立場が違うからではない。 この数字が、起訴の前で起きていることと、起訴の後で起きていることを、一つに畳んでしまっ Read more

その圧力は、相手にとってどう見えているか:権力の非対称性と認知の歪み

上司の何気ない一言に、部下が青ざめる。 親の「参考までに」というアドバイスに、子どもが追い詰められる。 「そんなつもりじゃなかった」と言う発する側と、「これはもう命令だ」と受け取った側。 その間には、埋めがたい溝がある。 この溝を、当人の気配りや性格の問題だと思っている人は多い。 だが、そうではない。 発する側 Read more

玉砕とキスカ、そして海軍善玉論:組織は自らの失敗をどう美化するか

アッツ島の玉砕は、たいてい「兵士たちの勇気」として語られる。 潔く散った、という美しい物語だ。 だが、史料を一手ずつ追うと、別の顔が浮かんでくる。 玉砕は、現場の勇気の問題ではなかった。 上層部の戦略失敗を、思想的に処理するための装置だった。 そして厄介なのは、いったんこの装置ができると、それが同じ失敗を繰り Read more

合理的な個人の総和が非合理を生む:太平洋戦争開戦から見る集合的意思決定の罠

太平洋戦争の開戦は、たいてい二項対立で語られる。 狂気に走った日本と、圧力をかけたアメリカ。 どちらが悪かったか、という問いになりがちだ。 だが、開戦に至る経緯を一手ずつ追うと、別の顔が見えてくる。 どのアクターも、それぞれの立場では、合理的に振る舞っていた。 誰も全面戦争を望んでいなかった。 それなのに、全員 Read more

ドキュメントの共同執筆が難しいのは、調整コストが不可視だから

Wikipediaは、数えきれない人数で書かれている。 共著論文も、新聞も、何人もの手が入って成立している。 それなのに、社内の設計書を三人で書こうとすると、たいてい空中分解する。 人数のせいだ、と言いたくなる。 だが、それでは説明がつかない。 Wikipediaのほうが、人数ははるかに多い。 だとすれば、難し Read more

構想はなぜ一人が早いのか、そしてLLMは何を変えたのか

構想や構成は、一人でやったほうが早い。 多くの人が、経験的にそう感じている。 複数人だと、なぜか前に進まない。 これを「調整コストが高いから」で説明したくなる。 だが、それだけでは足りない気がする。 調整とは、複数の像の差分を縮める作業だ。 ところが構想段階には、まだ縮めるべき像そのものが無い。 だとすれば、一人 Read more

AIで賢くなるほど、組織はバラバラになる:共通認識を「転送」から「再生成」へ

一人ひとりが、AIと対話して賢くなっていく。 それぞれが深く学び、それぞれの理解を手に入れる。 個人として見れば、これ以上ない良いことだ。 だが、組織の側から眺めると、妙なことが起きている。 全員が賢くなっているのに、共通の認識だけが、じわじわ失われていく。 賢くなるほど、話が噛み合わなくなる。 このねじれは、 Read more

責任は「取る」ものか 引責辞任が空虚に見える理由を語源と歴史から解剖する

引責辞任のニュースを見るたびに、小さなモヤモヤが残る。 誰かが頭を下げ、辞めていく。 けじめはついた、ということになる。 だが、「それで、何が解決したのか」という問いだけが、宙に浮いたまま消えない。 この違和感は、どこから来るのか。 「責任を取る」という、当たり前に使っている言葉。 その語源と歴史をたどっていく Read more

アトランティスは比喩として正しい:知識の脆弱性と文明の崩壊パターン

アトランティスは、実在しない。 考古学的な証拠はなく、科学的にはただの空想だ。 それでも、この物語は消えない。 高度な文明が一夜で滅び、知識の断片だけが受け継がれ、やがてそれも失われる。 この筋書きに、理屈を超えて惹かれてしまう。 ただの作り話なら、これほど繰り返し語られないはずだ。 だとすれば、事実としては嘘 Read more