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組織論

なぜルールは必ず腐るのか:150人の壁とグッドハートの法則

作ったときは、たしかに必要なルールだった。 それが数年後には、誰も目的を説明できない儀式になっている。 どこかで判断を誤った人がいるはずだと思って経緯をたどっても、そういう人は出てこない。 この気味の悪さは、運用の怠慢では説明がつかない。 制度は、導入した瞬間から本来の目的を離れていく力を内側に持っている。 Read more

玉砕とキスカ、そして海軍善玉論:組織は自らの失敗をどう美化するか

アッツ島の玉砕は、たいてい「兵士たちの勇気」として語られる。 潔く散った、という美しい物語だ。 だが、史料を一手ずつ追うと、別の顔が浮かんでくる。 玉砕は、現場の勇気の問題ではなかった。 上層部の戦略失敗を、思想的に処理するための装置だった。 そして厄介なのは、いったんこの装置ができると、それが同じ失敗を繰り Read more

合理的な個人の総和が非合理を生む:太平洋戦争開戦から見る集合的意思決定の罠

太平洋戦争の開戦は、たいてい二項対立で語られる。 狂気に走った日本と、圧力をかけたアメリカ。 どちらが悪かったか、という問いになりがちだ。 だが、開戦に至る経緯を一手ずつ追うと、別の顔が見えてくる。 どのアクターも、それぞれの立場では、合理的に振る舞っていた。 誰も全面戦争を望んでいなかった。 それなのに、全員 Read more

ドキュメントの共同執筆が難しいのは、調整コストが不可視だから

Wikipediaは、数えきれない人数で書かれている。 共著論文も、新聞も、何人もの手が入って成立している。 それなのに、社内の設計書を三人で書こうとすると、たいてい空中分解する。 人数のせいだ、と言いたくなる。 だが、それでは説明がつかない。 Wikipediaのほうが、人数ははるかに多い。 だとすれば、難し Read more

AIで賢くなるほど、組織はバラバラになる:共通認識を「転送」から「再生成」へ

一人ひとりが、AIと対話して賢くなっていく。 それぞれが深く学び、それぞれの理解を手に入れる。 個人として見れば、これ以上ない良いことだ。 だが、組織の側から眺めると、妙なことが起きている。 全員が賢くなっているのに、共通の認識だけが、じわじわ失われていく。 賢くなるほど、話が噛み合わなくなる。 このねじれは、 Read more

引き継ぎで知識は渡せても、判断基準は渡せない

引き継ぎ資料を、丁寧に作り込む。 構成も、背景も、想定される疑問への答えも、網羅する。 渡す側としては、それが親切だと思っている。 ところが、資料を精緻にするほど、受け取った側は自立しない。 「次は何をやればいいですか」「このやり方でいいですか」と、判断を外に投げ続ける。 おかしなことに、こちらが渡したものが Read more

ADRを効果的に組織へ定着させるために

ADRを導入しよう、と決めて、テンプレートを配る。 書き方も説明する。 それでも、なぜか埋まらない。 数週間もすると、誰も書かなくなっている。 フォーマットが悪いのだろうか。 レビューが甘いのだろうか。 そう考えて運用ルールを足すほど、ハードルだけが上がって、ますます書かれなくなる。 問題は、たぶんフォーマットの Read more

完成度の高さは心理的安全性を奪うかもしれない

作り込まれた提案が会議に出てくる。 資料に隙はなく、想定問答まで用意されている。 反対意見は出ず、会議は静かに終わる。 合意は取れた、はずだった。 ところが後になって、別の場所で本音が漏れる。 「本当は違う案がよかった」「あの場では言い出せなかった」。 発言を封じた人は誰もいない。 封じたのは、提案の完成度そのも Read more

「失われた30年」が示す、インセンティブ設計の原則

「失われた30年」を、打つ手がなかった時代だと思っている人は多い。 だが、当時のエコノミストは、何をすべきかをだいたい分かっていた。 不良債権の早期処理も、労働市場の改革も、答えは出ていた。 それでも、30年動かなかった。 答えがあったのに、動かない。 この奇妙さの前では、「正しい政策は何か」という問いはあま Read more

日本はなぜ「勝てないけど負けない」のか 変化と抵抗の二層構造

同じ国が、明治維新をやってのけ、同じ国が『失敗の本質』を書かせた。 一方は、数十年で社会を作り替えた変わり身の速さ。 もう一方は、負けが見えても方針を変えられなかった硬直。 この二つが、まるで別の国の話のように語られる。 だが、両方とも日本で起きたことだ。 変化の天才と、変化の劣等生が、同じ社会から出てくる。 Read more